お彼岸に心を整える – 六波羅蜜の実践

 春の訪れとともに、今年もお彼岸の季節がめぐってきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。身も心も「けんこう」に、毎日仏さまに手を合わせておられますでしょうか。


「彼岸」ってどんな意味?

 春分の日を挟んだ七日間のお彼岸の期間、多くの方がお墓参りに訪れます。
 「彼岸」という言葉は、サンスクリット語の「パーラミター」に由来し、「彼の岸に至る」という意味があります。仏教では、私たちが生きる、迷いや悩みの多い世界を「此岸(しがん)」。仏さまの悟りの世界を「彼岸」と呼びます。自分がいるこちら側の世界が「此岸」で、仏さまがいるあちら側の世界が「彼岸」です。
 つまり「パーラミター」は「仏の世界に行く」という意味になります。この言葉は、音写によって「波羅蜜多(はらみた)」と訳され、お経の中でも特に有名な『般若心経』に登場します。


お彼岸に実践する「六波羅蜜」

 「波羅蜜多」とは、彼岸に至るための修行という意味があり、そのための六つの実践が説かれています。これを「六波羅蜜」(ロクハラミツ)といい、これらの行いを修めることがお彼岸の期間において大切にされています。お彼岸は、身近なご家族やご先祖様に手を合わせ感謝を捧げるだけでなく、自分自身も仏さまに近づくために、修行を通して生き方を見つめ直す大切な期間なのです。


「六波羅蜜」
布施(ふせ)… 物やお金を施すだけでなく、優しい言葉や笑顔を人に向けることも立派な布施です。
持戒(じかい)… 約束を守り、誠実に生きること。日々の生活習慣を大切にすることも持戒です。
忍辱(にんにく)… 怒りに流されず、広い心を持つこと。人と穏やかに接することが大切です。
精進(しょうじん)… 何事も丁寧に、一歩ずつ努力を重ねること。コツコツ積み重ねることが大切です。
禅定(ぜんじょう)… 心を落ち着かせ、集中すること。深呼吸をし、静かに自分を見つめる時間を持つことが大切です。
智慧(ちえ)… 物事の本質を見極めること。偏った考えにとらわれず、正しい判断ができるよう努めます。

 日々の生活の中で、この六つの行い(六波羅蜜)を意識し実践することで、私たちは身も心も自然と仏さまに近づいていくのです。

ご先祖様に感謝を伝える「お墓参り」

 

 お彼岸には、ご先祖様のお墓参りをする風習があります。お墓を掃除し、手を合わせることで、亡き方々への感謝の気持ちが深まります。お墓参りは単なる供養ではなく、自分の生き方を振り返る機会でもあります。

「今、自分はどのように生きているのか?」
「ご先祖様がつないでくれた命を、どう生かしていくのか?」

 このように考える時間を持つことが、お彼岸の大切な過ごし方です。また、家族と一緒にお墓参りをすることで、世代を超えたつながりを実感できるでしょう。子どもたちにとっても、ご先祖様を身近に感じる貴重な時間になります。お線香を手向け、花を供え、静かに手を合わせることで、心が清められます。


 春分の日は「自然をたたえ、生物をいつくしむ日」とされています。仏教では、すべてのいのちはつながり合い、支え合っていると説かれています。彼岸の時期に、自然に感謝し、周りの人へ思いやりを持つことは、六波羅蜜の教えにも通じます。
 

 たとえば、「布施」の実践として、身近な人に優しい言葉をかけること。「持戒」として、生活のリズムを崩さないこと。「忍辱」として、自分の思い通りにならないことがあっても心を乱さないこと。「精進」として、どんなことにも正面から向かい合い努力を惜しまないこと。「禅定」として、心を落ち着け自分や周りの人と向かい合うこと。そして、「智慧」として、すべての命の尊さに気づくこと。これらの行いを通じて、私たちは彼岸へと近づいていくのです。

 お彼岸は特別な期間ですが、大切なのはその精神を日常の中に生かすことです。日々の暮らしの中で、六波羅蜜の実践を意識し、穏やかで思いやりのある生活を心がけることが、彼岸の本来の意味を深めます。

 春の訪れとともに、自らの心を見つめ直し、一歩ずつ「彼の岸」へと近づいていきましょう。六波羅蜜の実践は、決して難しいものではありません。日々の暮らしの中で、小さなことから始めてみることが大切です。
 お彼岸を迎えるこの機会に、心穏やかに、感謝の念を持ち、日々の行いを見直してみませんか。彼岸の教えを胸に、よりよい人生を歩んでいきましょう。

曹洞宗 永泉寺

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