新年のご挨拶

 新年あけましておめでとうございます。
 皆さま、新たな年を迎え、いかがお過ごしでしょうか。身も心もすこやかに毎日ほとけさまに手を合わせておられますでしょうか。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
 お正月の風景として代表的なものの一つが「門松」です。永泉寺では今年初めて山門に門松を飾りました。門松は正月に家の門や玄関先に飾られる伝統的な飾りの一つですが、門松には大切な役割があります。それは「歳神さま」を家に迎える目印になることです。歳神(としがみ)とは、新年に家々を訪れ、幸福や豊穣、健康をもたらす神さまのことです。年の初めに現れることから、「年神」「正月様」「恵方神」とも呼ばれます。この神さまを家に招き入れることで、新たな一年の無病息災を祈ります。

歳神さまと鏡餅

 家に迎えた神様は一体どこにいるのかというと、「鏡餅」に宿ると言われています。鏡餅の丸い形は、すべてのものをありのままに映し出す「鏡」を象徴しています。日本では鏡は神を迎えるための依り代と考えられ、神社の御神体として奉納されることが多いといわれます。鏡餅にしばらく宿った歳神さまは、最終的にどこへ行くのかというと、私たちのお腹の中です。鏡開きでそのお餅をいただくことで「歳神さま」を体内に取り込むのです。歳神さまの魂をいただくことで、その年を健康に過ごし、さらにお餅を通じて自然の命や大地の力を授かるとされています。

 この「歳神さまの魂をいただく」という考え方から、「歳魂(としだま)」という言葉になり、やがて「お歳魂(おとしだま)」へと変わり、最終的に「お年玉(おとしだま)」となったとされています。現在ではお年玉といえばポチ袋に入ったお小遣いのことですが、元々は鏡餅を家の主人が家族に配ることがお年玉だったのです。
 この話をしたあとで、子どもたちに小遣いではなくお餅をお年玉として配ったらどんな反応が返ってくるか気になりますね。


親 「はい、今年のお年玉だよ」(お餅を手渡す)
子 「えっ?お金じゃないの?」
親 「もともとお年玉っていうのは、歳神さまの魂をいただく意味があるんだよ。このお餅にはその力が宿ってるんだ」
子 「へぇ…でも、これじゃゲームソフト買えないよ?」
親 「ゲームソフトより、このお餅を食べると、健康と幸せがもらえるんだよ!」
子 「うーん、じゃあ食べたらゲームソフトももらえる?」
親 「どうかな?でも、歳神さまの力でゲームがもっと上手くなるかもしれないよ!」
子 「ほんと!それじゃもっとお餅ちょうだい!」

とはならないでしょうね… 


 子どもたちには、お年玉=お金というイメージが強いので、お小遣いとお餅をセットで渡せば、お正月についての勉強にもなるし、伝統的な考えを伝える良い機会になるかもしれませんね。


自分を見つめ直す

 先ほど「鏡」の話がでてきましたが、私たちは日常生活の中で、鏡を見る機会が数え切れないほどあります。朝起きて顔を洗う時、外出前に身だしなみを整える時、電車の窓に映った自分の姿を見る時、ふとした瞬間に鏡を見ることが日常の一部となっています。鏡を見る理由は様々ですが、その多くは「人にどう見られているか」を気にするためではないでしょうか。自分の髪型が乱れていないか、服装がきちんとしているか、どんな表情をしているか等々、私たちは他人からの視線を意識して鏡に向かいます。これは、社会生活を送る上で大切なことでもあります。しかし、それほどまでに外見を気にする時間がある一方で、自分の内側、つまり「心」を見つめ直す時間はどれほど取れているでしょうか?外見と同じように、心も慌ただしい日々の中で疲れたり、乱れたりするものです。それに気づくき、心をととのえておくことは、心の健康や自分らしい生き方をするために必要なことです。

 では、外見ではなく「心」を調えるためには、どのような鏡が必要なのでしょうか。禅の教えでは、心を調えるためには、まず「行い」を正していくこを大切にします。日々の行い、つまり生活習慣を見直し、正していくことが心を調える第一歩となります。

 新しい一年を迎えた今、昨年の出来事や自分の行動について振り返り、反省することが大切です。過去を振り返ることは、何もネガティブな行為ではありません。それは、次のステップへ進むための準備であり、心を調えることにも繋がります。反省した後は、新たな気持ちで前を向くことが大切です。これまでの経験を糧にして、今年はどのように生きたいか、何を目指したいかを心に描いてみましょう。新年は、誰にとってもリセットのチャンスです。
 この時期に、目標や希望を立てることは、自分自身を鼓舞する力となります。そして、その希望に向かって努力することで、私たちは周囲の方々への感謝を形にすることができるのです。


おわりに

 新年は、過去を振り返ると同時に未来を見据える大切な節目の時です。門松や鏡餅、歳神さまといったお正月の伝統を通じて、私たちは自然や神仏、そして自分自身と深く向き合うことができます。この特別な時間を大切にし、心を清め、新たな一歩を踏み出しましょう。

 皆さまが今年一年、身も心も健やかに過ごされますよう、お祈り申し上げます。

曹洞宗 永泉寺

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