こだわりを手放す

 皆様、こんにちは。
 雨の日が多くなり、身心ともに少し疲れを感じやすいこの頃。皆様におかれましては、身も心もすこやかに毎日ほとけ様に手を合わせておられますでしょうか。
 雨は恵みの雨ともいいますが、降り続く雨は、どこか気持ちを沈ませてしまうこともあります。そんな時こそ、ゆっくりと呼吸を整え、心穏やかに過ごす時間を大切にしたいものです。

何が雑念なのか気付くこと

 曹洞宗は坐禅の教えを依りどころにしています。その教えとは、坐禅の実践によって得る「身と心のやすらぎ」がそのまま「仏の姿」である、と自覚することにあります。
 坐禅は心を落ち着かせ、自己の内面を見つめる貴重な時間ですが、坐禅をしていると様々な考えが頭の中をよぎることがあります。時には取るに足らないことばかり考えてしまい、心が落ち着かなくなることもあるでしょう。「雑念をなくす」ことが坐禅の目的、という印象を持っている方が多いと思いますが、坐禅中に雑念が浮かんでくることは決して悪いことではありません。様々な思いを巡らす中で「何が雑念なのか気づくこと」。それこそが坐禅の第一歩であり、自分を見つめ直すことにつながるのです。


今、ここ、自分

 坐禅中に浮かぶ思いは、私たちが普段どれだけ多くの考えや感情に囚われているかを教えてくれます。「仕事や学校のこと」「人間関係のこと」「他人にどう思われているか」などなど、それらの思いに私たちは常に振りわまされているのです。坐禅を通して、私たちはこれらの思いを見つめ直し、それが自分を苦しめる余計な思いだと見つめ直す事ができるようになります。雑念だと気付き、その思いを手放すことができれば、余計な思いに振り回されることも少なくなるでしょう。しかし、気付いたからといって、雑念を手放すのは簡単ではありません。ではどうしたらいいのでしょうか。


ポイントは二つあります。
一つ目は、「今、ここ、自分」から離れないことです。
二つ目は、「仏さまの目」で自分の心を見つめ直すことです。
 

一つ目のポイントの「今、ここ、自分」とは「即今、当処、自己」という禅の言葉です。
 

即今(そっこん)= いまこの瞬間のこと
当処(とうじょ)= いまこの場所のこと
自己(じこ)  = 誰でもない自分のこと


すなわち、「いまこの瞬間に、自分がいるその場所で、自分が何をするのかが大切だ」という教えです。

 「今、ここ」から心が離れると、変えることのできない過去や、どうなるか分からない未来の事ばかり考えて、後悔したり不安になってしまいます。過去の失敗への落胆や、必要以上に未来に期待してしまう貪りの心が起こりがちです。また「自分」から心が離れ、他人に強く気持ちが向いてしまうと、相手に求めすぎたり、相手が思い通りにならないと怒りや憎しみが起こります。そして衝動的に相手を傷つけてしまうような愚かな言葉をかけてしまうことがあります。「今、ここ、自分」から外に気持ちが向かうと、心が落ち着かなくなってしまうのです。
 そこで坐禅では、自分の外ではなく内側に気持ちを向けます。姿勢と呼吸を丁寧に調え、ゆったりとした呼吸の中で「今、ここで、自分」が出来ることに精一杯意識を集中します。それでも雑念は起こってきますが、そんな時は落ち着いた心で一つ一つの思いを観察し、再び姿勢と呼吸に意識を集中して、余計な思いが浮かんでもそこで立ち止まらず、受け流していくのです。
 では、余計ではない大切な思いとは何か。これも人によって違いますし、これだ!と決めつけることはできません。夢や目標に向かって努力すること、自分の信念を貫くこと、大切な人を守ること。こういったこだわりは、私たちに生きる力と勇気を与えてくれます。しかし、一見正しいように見えますが、自分の信念を貫こうとするが故に周囲との意見の相違が起こり、言い争いになることもあります。時には人を傷つけることもあるでしょう。何が正しいことなのか、どんな思いが余計ではないのか、見極めるのは難しいですね。どの様な視点で物事を見極めたらいいのでしょうか。


慈悲の目で見る

 そこで大事なのが、二つ目のポイントの「仏さまの目」で自分を見つめ直すことです。仏さまの目とは何かというと「慈悲」の目です。慈悲とは、人の苦しみを取り除き、幸せを願う心のことです。夢や目標、大切にしている信念、その中に「慈悲」の思いがあるかどうか、もう一度見直してみてはいかがでしょうか。自分の幸せだけを考えてはいないでしょうか。自分だけでなく、人の幸せを願う気持ちがそこにはあるでしょうか。そういった気持ちを、坐禅をくみ、姿勢をととのえ、呼吸を落ち着けて、穏やかな心で見つめ直してみましょう。

曹洞宗 永泉寺

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