幸せはいくら分けても減らない
「一つのたいまつから何千人の人が火をとっても、火は元のとおりであるように、幸福はいくら分け与えても、滅るということがない。」
『四十二章経』
このたび、お寺の山門の横に掲示板を設置しました。お寺の前の道路は通学路になっており、毎日たくさんの子どもたちが通ります。せっかくなので、この掲示板には子どもたちにも分かりやすい言葉を伝えていきたいと思っています。
最初に掲示したのは、
「幸せはいくら分けても減らない」
という意味の言葉です。
ここで言う「幸せ」とは、物やお金ではなく、心の幸せのことです。何か良いことがあって、その気持ちを誰かと共有すると、相手も一緒に喜んでくれます。家族や仲の良い友達に良い出来事があったとき、なぜか自分まで嬉しくなる──皆さんもそんな経験があるのではないでしょうか。幸せな気持ちは、分かち合えば分かち合うほど大きく膨らんでいきます。
逆に、分かち合うと小さくなるものもあります。それは、苦しい気持ちです。嫌なことや不安なことを一人で抱え込むと、その思いはどんどん大きくなり、時には抱えきれなくなることもあります。しかし、そんなときでも、誰かに話を聞いてもらうだけで気持ちが少し楽になることがあります。問題がすぐに解決しなくても、「分かってくれる人がいる」と感じるだけで心が軽くなり、その少しの安心が明日を生きる力になるのです。幸せも苦しみも、分かち合いながら生きていく。
それこそが、お釈迦さまの教えなのです。
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